日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「世界のゼロコロナ政策と日本の後れ」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
【データが示す】ワクチン種類別・追加接種後の予防効果の推移はこちら
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緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のない大型連休は3年ぶりです。第6波がピークアウトし、感染者数も右肩下がりで減少し、新型コロナウイルスワクチンの追加接種が進む中、コロナとの共存へと社会が動き出している気配を感じます。
内科外来の現場でも風邪症状を認めて受診される方はいらっしゃるものの、ピークの時よりはかなり減少しています。PCR検査を行うものの、陽性が出るのは1割弱の水準まで下がってきています。長かった冬の流行がやっと落ち着いてきたことを実感しています。
前回このコラムでは、新型コロナウイルス感染症には季節性の変化があるのではないかと考察しました。Our world in dataで世界各国のコロナ新規感染者数のグラフをみていると、感染者数の違いはあれども、日本で流行が落ち着いているように、イギリスやドイツ、フランスやカナダでも新規感染者数は右肩下がりを認めていて、アメリカではやや増加傾向にあるものの、低水準を維持しています。
4月27日、アメリカ政府の首席医療顧問であるファウチ氏は、「パンデミックはまだ終わっていないが、パンデミック期の急性期の段階を脱し、パンデミックの新しいフェーズに入った」という見解を示しました。ホワイトハウスのアシシュ・ジャー博士は前日の26日の記者会見で、「新たな感染を完全に止めることは政策目標ですらない。代わりに、感染を最小限に抑えながら重症化を防ぐことに集中すべきだ」との考えを示しています。
欧州連合(EU)も27日に、「EUはパンデミックの『緊急段階』から脱却しつつある」と述べ、「秋に新たな感染の波が来る可能性に備えて、ワクチン接種、監視、検査に重点を置く」と言います。やはり次の流行を見据えて、対策を考えていることがうかがい知れます。