2016年には推薦入試(現・学校推薦型選抜)を導入した東京大。徐々に女子学生比率は高まっているが、2 割を超えたことは過去一度もない(「東京大学の概要2021」から作成)
2016年には推薦入試(現・学校推薦型選抜)を導入した東京大。徐々に女子学生比率は高まっているが、2 割を超えたことは過去一度もない(「東京大学の概要2021」から作成)

 支援の対象は学生だけではない。女性教員には希望に応じて男女共同参画室員またはメンター教員が悩みをサポート。育児や介護で研究を一時中断しても円滑に復帰するための支援も実施している。

■個別の仕組みを連携 今後の改革の課題は

 21年7月からは1、2年向けにダイバーシティ啓発の動画コンテンツを用意し、女性をはじめとした多様な人々が共存する意義を伝える。学内で推し進められるジェンダー改革について、男子学生はどう感じているのだろうか。

「賛同する学生、不公平だと異議を唱える学生、さらに全く無関心な学生もいます。女性の立場を改善する取り組みには『逆差別だ』という反論がありますが、ジェンダー改革とは男性を否定して追いやることではありません。学生には、学問においても就職やキャリア形成においても現代社会の仕組みが女性に不利にできているという事実を正しく理解し、多様な人々が互いの違いを認め合いながら切磋琢磨することの素晴らしさを知ってほしいです」

 東京大ではジェンダー改革の中心を担う男女共同参画室をはじめ、グローバルキャンパス推進本部、バリアフリー支援室など、複数の組織が大学生活を支援。成績や友人関係、就職、ハラスメントといった一人ひとりの悩みに向き合う場としては、相談支援研究開発センターとハラスメント相談所が設置され、常駐の精神科医師がカウンセリングを行っている。

 今後の課題は、個別に運用されてきたこれらの組織がさらに緊密に連携する仕組みをつくり上げることだと言う。

「理事就任後に学内を見渡した時、全国トップクラスの仕組みは整っているのに、活動が個別になっていて、学生や教職員に十分に周知されていないところがあると感じました。今後は各組織が情報を共有して、学内設備などのハード面から個人の精神的サポートといったソフト面まで、アイデアを出し合って学生や教職員を応援していきたいと思います」

 ジェンダー改革が推進され、「男性中心の大学」というレッテルが外れた時、そこにはさらなる飛躍が待っているのではないか。林教授は、東京大をめざす女性に向け、応援のメッセージを送った。

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