でも拙い意見でも、発言の場を持っている以上はやはり書いておかねばと思ったのは、テロの専門家である防衛大教授のインタビューを同紙で読んだからだ。
教授によれば、テロリストの狙いは社会の恐怖と過剰反応を引き起こすことだという。自由と民主主義を壊すのはテロリストではなく、テロを見て監視や自粛などの規制を強め、自ら自由を手放していく我々の側なのだと。
そして今回、容疑者の思惑とは別に、我らの社会は事件を機に物言えぬ空気を作り出した。それも「民主主義を守る」という大義の下に。国葬はその集大成のように私には見える。病んでいるのは容疑者なのだろうか。マスコミなのだろうか。それとも我々なのだろうか。
◎稲垣えみ子（いながき・えみこ）／1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』（マガジンハウス）、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』（東洋経済新報社）を刊行
※AERA 2022年8月1日号
稲垣えみ子
稲垣えみ子（いながき・えみこ）／1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』（マガジンハウス）、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』（東洋経済新報社）を刊行
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