生活を共にしていた夫婦が離婚して別居しようとするとき、最も大きな問題は「住居」だろう。どちらか一方がそのまま住み続けるとなれば、特に持ち家の場合は、名義変更や住宅ローンの一本化などやるべきことは山ほどある。しかも「離婚する相手」の協力がないと進まない手続きもあり、頭を抱える当事者は少なくない。4月に「持ち家離婚」(みらいパブリッシング)を出版した離婚住宅アドバイザーの入江寿(いりえ・ことほぎ)さんに、離婚時のマイホーム問題をどのように解決すればいいのかを聞いた。
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中村一恵さん(仮名)は、10年前に購入したマンションに夫と保育園に通う子どもの3人で住んでいる。だが、すでに夫とは離婚が決まっている。頭を悩ませているのは、離婚後、このマンションをどうするかということだ。
「子どもとの生活を守るためにも、できれば私と子どもは、いま住んでいるマンションに住み続けたいんです」(一恵さん)
一恵さん夫婦は共働きで、マンションの持ち分は3分の2が夫、残り3分の1が一恵さんとなっている。ローン残額は2人合わせて2200万円。一恵さんが子どもと一緒にこのマンションに住み続けるには、マンションの名義と住宅ローンを一恵さんに一本化する必要がある。
だが、子育て中で時短勤務中の一恵さんの年収は、約180万円。銀行に相談したところ、ローンの一本化はできないと断られてしまった。
「夫は、自分のローンが残っているのは嫌だ、マンションを売却したいと言うんです。でも、ここを出て行って賃貸暮らしになるのは、金銭的にも将来的にも不安。子どもの保育園の問題もあるので、引っ越したくはありません。どうしたらいいのか、困り果てています」
夫婦が離婚する場合、話し合って決めなければならないことは山ほどある。子どものこと、お金のこと、住まいのこと……。そのうち、とくに厄介なのが持ち家問題だ。
「持ち家をどうするかが決まらなくて、離婚の話が進まないということは多いのです」
こう語るのは、離婚住宅アドバイザーの入江寿さんだ。