コロナがなければ、きっと安田さんの手に自分の手を添えていたと思います。人との接触がひどく問題視されていたあのときは、私は安田さんの手を握ることができませんでした。
いまでも「ひとりで逝かせてしまった」という後悔が残ります。振り返って考えれば、手を握ることはできたでしょう。でもあのときは隣に座り続けることしかできませんでした。
亡くなった患者さんを思い返すとき、いつでも自分の不甲斐なさを思い知らされます。もう20年近く医者を続けていますが、患者さんから学ぶことはいまでもたくさんあります。
この記事を書きながら安田さんのことを思い出し、いまはこう思います。
次はちゃんと手を握ろう。
医療は次がないことがほとんどだからつらいんだけど、コロナ禍で経験したこの後悔を無駄にしたくないと思っています。