「『性暴力』は人間破壊」などと書かれたカードを持って街頭に立つフラワーデモの参加者たち/21年11月
「『性暴力』は人間破壊」などと書かれたカードを持って街頭に立つフラワーデモの参加者たち/21年11月

 教師による生徒への性暴力が後を絶たない。文部科学省によると、2020年度に「性犯罪・性暴力等」を理由に公立学校の教師200人が処分された。性暴力の訴えは学校側に黙殺され、被害を受けても声を上げることすらできないこともある。被害者が声を上げやすい社会をつくるためにはどうすればいいのか。AERA 2022年5月16日号から。

【性暴力等で懲戒処分を受けた公立教員数はこちら】

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 4月2日、東京都内の小学校に勤める40代の教師が、10年前に当時10代の女性に性的暴行を加えた疑いで逮捕された。この男性教師の逮捕は今年に入ってから3回目。いずれも、子どもを狙った性犯罪の容疑だ。これまでに勤務していた小学校で担任をしていた複数の女児の着替える様子を盗撮したなどとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで捜査が進んでいる。

 文部科学省によると、2000年度に「性犯罪・性暴力等」を理由に処分された公立学校の教師は200人(男性196人、女性4人)。11~19年度に「わいせつ行為等」で処分された人数を加えると、10年間では2182人になる。この中には私立学校の教師は含まれず、氷山の一角の数字だ。

 こうした状況から子どもたちを守ろうと、21年5月、教員による児童生徒への性暴力を禁止する新法が国会で成立した。教員による児童生徒や18歳未満に対する性交やわいせつ行為について、同意の有無を問わず「児童生徒性暴力」と定義し、その禁止を明記。懲戒免職になって教員免許を失っても、失効後3年たってから申請すれば自動的に再交付されて教壇に戻れる現状にも歯止めをかけた。

 新法ができたことは、「同じような被害で苦しむ子どもが出ないように」という願いを込めて、性暴力被害者やその家族などが声を上げてきた努力の成果で、第一歩となるものだ。しかし、被害者が泣き寝入りしたり、学校側がかたくなに事実を認めず、処分が行われなかったりしたケースには適用されない。私がかつて取材した公立小学校で起きた事件も適用外の可能性が高い。

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