一通りの学習はした上で、さらにレベルアップを目指す人には、詩の朗読がおすすめです。欧米では、詩は小説と同様に文学として認知されていて、誰もが知る有名な作品も数多くあります。大人同士の会話では、言葉の知識だけではなく、教養も求められるもの。詩などの文学作品を通じて、「欧米人であれば当たり前に知っている」教養や常識を身につけておくことは、とても大切です。
今回私がみなさんに紹介したいのは、アメリカの大統領就任式で朗読された二つの作品です。いずれも作者は黒人女性で、就任式では本人が詩を読んでいます。詩の内容はもちろん、彼女たちの姿も非常に感動的なので、ぜひYouTubeでご覧になってみてください。
詩は1、2度読んでも、意味はわかりません。作者が言葉に込めた思いに触れるためには、作品の背景を知ることが大切。例えばアマンダ・ゴーマンさんの詩の背景には、奴隷制度の歴史、人種差別や社会の分断といったアメリカが抱える社会問題があります。そういった事柄を踏まえて繰り返し読むと、いつしか「あぁ、ここはこういうことを言いたいのだな」とわかる瞬間が訪れる。みなさんには、そういう経験をしてほしいのです。言葉の周囲にあるさまざまな要素を取り込みながら、深く立体的に意味を捉えることが、本当の言語学習だと私は思います。
【杉田敏さんのおすすめ英語学習教材・ツール】
◇ニュース動画で時事英語をチェック
『CNN』
杉田さんがジムでトレーニング中に見ているというCNN。時事問題からエンターテインメントまで広く網羅するニュース動画はYouTubeでも視聴可能で、ウェブサイトでは英語字幕やトランスクリプトも利用できる。
◇詩の朗読で心震わす言葉と出合う
マヤ・アンジェロウ氏はクリントン大統領、アマンダ・ゴーマン氏はバイデン大統領の就任式で詩を朗読した。公民権活動家としても知られるアンジェロウ氏は、黒人女性として初めて、25セント硬貨のモデルに採用された。
杉田敏(すぎた・さとし)
元NHKラジオ「実践ビジネス英語」講師。英字新聞記者を経て、米国でジャーナリズムの修士号を取得。帰国後はビジネスの第一線で活躍する一方、長年にわたりNHKラジオのビジネス英語講座を担当。著書に『英語の新常識』(インターナショナル新書)など。
(文/木下昌子)
※『AERA English2022』から抜粋