※週刊朝日2022年5月20日号より
※週刊朝日2022年5月20日号より

■売却手続き大変 購入より賃貸に

 住み替えでやってはいけないのは、住宅ローンを新しく組むこと。

「子どもが独立してから、夫婦2人で一軒家に住むのは広すぎるので、自宅を売却して駅近のマンションに住み替える人も増えていますが、ファミリータイプの物件やタワーマンションとか、高額な物件を購入して再び住宅ローンを組むような住み替えはやってはいけません。私たちも売却した資金でマンションの購入も考えましたが、また売却の手続きが大変なので賃貸にしました」

 夫が定年退職を迎えて間もないときは、体力もあって元気なので、現役時代にやりたかった夢を実現させたいと思うかもしれない。その典型例は「田舎暮らし」。後期高齢者医療制度の対象になる75歳以降は、体力や気力が落ちてくるので、運転免許証の返納をする年齢に差しかかると、田舎暮らしは不便になる。

 徒歩や自転車、公共交通機関が利用できる都心で生活するほうが高齢期は便利なケースもある。

 また、テレビ等で定年退職後に地方に移住して農家レストランを開業した夫婦のエピソードなどを見ることがあるが、「起業はいいことばかりではないので成功例をうのみにするのは危険」と井戸さんは注意を促す。

「改正高年齢者雇用安定法で65歳から70歳まで働く機会を確保することが企業側の努力義務となり、年齢に関係なく働くチャンスが広がってきました。65歳以降、働いて収入を増やそうと、(1)継続または再雇用で同じ会社で働く、(2)別の会社に転職する、(3)起業するという三つの選択肢がありますが、起業で失敗する人もよく見かけます」

 従業員が自分一人しかいないのに、退職金を注ぎ込んで株式会社を設立して事務所を構える。会社登記のコストだけでなく、毎月の事務所の維持費のほか、たとえば経理を税理士にお願いすればランニングコストが重くのしかかる。

「安く借りられる空き家物件が多く、融資が受けやすい今がチャンスですと乗せられても、月々固定費がかかるような仕事はお勧めではありません。喫茶店やパン屋さんを始めたいという人も意外と多いのですが、原材料費や燃料費が高騰しているのでオープンする時期は見極めたい」

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