
動物写真家・岩合光昭さんが見つけた“いい猫(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、ギリシャのイドラ島の「極楽にゃんこ」です。
* * *
「僕は新潟に行ったことがあるんだ」と、67歳のおじさんは話しかけてきた。かつて船の通信士として世界の海を巡ったのだと。30年前、この島に住んでからは、猫のごはんを手に島内をぐるぐる巡るのが日課となった。

満腹になった猫がのんびりと、顔を洗う。対して、島のラバ(ウマとロバを掛けあわせた)は忙しそうに、背中に荷物をのせると山の上の教会へ運ぶ。日差しが強くなると、猫は当たり前のようにラバの陰に入った。
人には人の、ラバにはラバの、猫には猫の、生き方がある。
※週刊朝日 2022年5月20日号