「最初は50を目指していたのですが、内容を整理して少なくなりました。でも40だと中途半端で偶数だとありきたりな感じがした。37って違和感がありませんか。書店に並ぶたくさんの本のなかで目を留めてほしいと、この数字になりました」

 マーケティングの観点からは、切りの悪い数字は信頼感を与えるという研究がある。

 スーパーで、100円ではなく99円、1000円でなく980円の商品を見かけることがある。フロリダ大学の研究によると、20ドルと19ドル95セントの同じ商品があると、端数の方が「精密度が高い」と判断するのだという。

 確かに、切りの悪い数字の方がお値打ち感や努力の跡を感じることがある。

粋なネーミングも魅力

 数字好きのニッセイ基礎研究所・研究理事、中村亮一さん(63)は数字の魅力をこう語る。

「素数に関しては、未解決問題がいくつか存在しており、複雑で不思議な世界を構築しています。だからこそ、多くの人を魅了し、ロマンを感じさせます」

 中村さんは保険の専門家だが、大学で数学を専攻していたこともあり、同研究所のウェブサイトでは数字に関するコラムも執筆している。「セクシー素数―お堅いイメージの数学にも一見粋な名称の概念が存在しているって知っていましたか―」など、なかなかキャッチーだ。

「セクシー素数は面白いネーミングなので紹介しました。もとはラテン語の6を意味するsexからきています。『差が6』の二つの素数で、例えば5、11。差が2なら双子素数、差が4ならいとこ素数と呼ぶことからすれば、『はとこ素数』と呼んでもよいかもしれませんが、これでは味気ないものになっていたでしょう」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2022年5月23日号