そして、鬼滅の世界に“鬼”が出現したのは、病弱だった鬼舞辻無惨を延命するための「治療」が原因だった。ある善良な医師が、「青い彼岸花」から薬を作り出したが、その薬が鬼舞辻無惨を鬼へと変貌させた。

 それ以降、無惨は人間の血肉しか欲せず、日光におびえるようになる。「鬼の始祖」の誕生だった。延命と治癒のための薬が「人間の鬼化」という毒となって作用した、悲劇の事例である。

■珠世によってもたらされた「薬」という希望

鬼滅の刃』には鬼を滅殺するために「太陽の光か特別な刀で頸を切り落とさない限り殺せない」(1巻・第4話)という設定が語られている。この「特別な刀」こそが、太陽のパワーを刀身に秘めた「日輪刀」である。

 しかし、コミックス2巻で医師の鬼・珠世が登場した際に、“新しい方法”が示される。「鬼を人間に戻す薬」の概念だ。

<鬼を人に戻す方法は あります>(珠世/2巻・第15話「医師の見解」)

 この時、珠世は、医療行為によって「人間を鬼にする」方法をすでに確立していることを炭治郎に明かしている。鬼化の解明のために調べたデータを「逆に」活用することで、「鬼を人間に戻す」ことができるのはないか、と考えたのだ。珠世の言葉は、鬼を殺す方法以外に、世の中にはびこる「鬼の被害」を無くすための新しい希望となった。

■蟲柱・胡蝶しのぶがもたらした鬼を殺す「毒」

 珠世の出現によって、鬼を人間に戻す「希望」が見いだされたが、その一方で、鬼の滅殺のために毒を開発している人物がいた。蟲柱・胡蝶しのぶだ。

<私は柱の中で唯一鬼の頸が斬れない剣士ですが 鬼を殺せる毒を作ったちょっと凄い人なんですよ>(胡蝶しのぶ/5巻・第41話「胡蝶しのぶ」)

 しのぶの毒は、鬼の弱点である「藤の花」から生成される。薬学に精通しているというしのぶは、彼女なりに「鬼のいない世の中」を取り戻す方法を研究した。しのぶの両親と姉は、かつて鬼に殺害されており、ほかの鬼の被害者家族の悲嘆を目撃するたびに、心を痛めていた。悲しみが激しい怒りへと変わる。戦闘には不向きな小柄できゃしゃな体であるにもかかわらず、「毒」の使用という自分なりの闘い方を模索することで、鬼殺隊の「柱」にまでのぼりつめたのだった。

暮らしとモノ班 for promotion
7月16,17日開催Amazonプライムデー。八村塁選手が厳選するアイテムは?
次のページ
珠世としのぶの共通点