鬼の珠世(左から2番目)と胡蝶しのぶ(右)<画像はコミックス「鬼滅の刃」6巻、21巻のカバーより>
鬼の珠世(左から2番目)と胡蝶しのぶ(右)<画像はコミックス「鬼滅の刃」6巻、21巻のカバーより>
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【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【写真】「上弦の鬼」のなかで最も悲しい過去を持つ鬼

 大ヒット作品『鬼滅の刃』は、そのタイトルのとおり、人間が「日輪刀」と呼ばれる刀を用いて、鬼たちと戦う物語だ。しかし、ストーリーが進む中、“鬼退治”のために開発された「毒と薬」が、勝敗を決するほどの大きな鍵になっていく。「『鬼滅の刃』と銘打ちながら、なぜ刃ではなく薬が、戦いの決定打になるのか」と一部のファンの間で物議をかもしたこともある。しかし、この物語において、「毒と薬」の開発は必然だった。「毒と薬」と鬼との関係をひもとき、開発者である2人の女性キャラクターの共通点、物語上に張られた“伏線”について考察する。

*  *  *

■「毒と薬」と鬼との関係

『鬼滅の刃』は“鬼”という魔物と人間との戦いをテーマにしたバトル漫画である。しかしながら、日本古来の物語に数多く描かれてきた“鬼”を登場させながら、鬼滅には“独特の設定”がみられる。

 主人公である竈門炭治郎の妹・禰豆子が鬼になった理由について、第1話で水柱・冨岡義勇がこんな説明をしている場面がある。物語における「鬼」の設定がよくわかるセリフだ。

<簡単な話だ 傷口に鬼の血を浴びたから鬼になった 人喰い鬼はそうやって増える>(冨岡義勇/1巻・第1話「残酷」)

 さまざまな『鬼滅』の考察で、鬼と病の関係が話題にのぼることがあるが、鬼化の原因が「血液を媒介とする感染」をイメージさせることもその要因であろう。「遊郭編」で炭治郎たちが対峙した、「上弦の陸」との戦いにおいても、妓夫太郎の「血鎌」の毒が音柱・宇髄天元たちをむしばんだ。鬼の総領・鬼舞辻無惨の血液も毒として作用する場面があり、『鬼滅の刃』において、物語冒頭から結末まで、「毒」は重要なモティーフとして描かれていることがわかる。

■「毒と薬」は表裏一体

 そもそも、現実世界においても「毒と薬」は表裏一体の関係にある。ある生命体にとっては毒として作用するものが、他の何かには薬としての役割を果たす事例は数多くある。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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「鬼を人間に戻す」ことができるのでは