江夏さんの連続奪三振数は、実は九つではない。
前年のオールスターでも5連続奪三振を記録。それに9連続奪三振が加わり、その年の第3戦でも一つ三振を取っている。年をまたいで15連続奪三振を達成しているのだ。その記録を止めたのが野村克也。三振しまいとバットを短く持っていたという。打球はセカンドへのゴロとなった。
江夏さんに現役で楽しみな選手を聞くと、ソフトバンクの千賀滉大投手の名を挙げた。
「会ってお話ししたときも、すごく好感が持てる選手だったね。キャンプに行ってもすぐにあいさつにきてくれて。だから『頑張れよ!』って言いたくなるんだよね」
千賀投手は今回のオールスター出場は逃したが、史上最年少で完全試合を達成した佐々木朗希投手(ロッテ)と松川虎生捕手(同)のバッテリーに注目が集まる。投手陣ではほかに、7月22日時点でハーラートップを走る青柳晃洋(阪神)や、初選出の高橋奎二(ヤクルト)も期待大だ。
田淵さんは、ファン投票1位(抑え投手部門)に輝いた巨人のルーキー、大勢投手に注目していた(新型コロナ感染で欠場)。「新人でどれだけ投げられるか。1年目はハラハラドキドキするもの。俺の1年目は、金さん(金田留広)からホームランを打って、頭たたかれたよ(笑)」
オールスターで江夏さんの大記録に最も近づいたのは、84年の江川卓さん(巨人)の8連続奪三振だ。今回はそれを上回り、大記録に並ぶことができるだろうか。
田淵さんが言う。
「ないんじゃないかな。そもそも、3イニング投げる、ということが少なくなってきたしね。あえて達成できそうな選手を挙げるとすれば、山本(由伸・オリックス)、佐々木ぐらいか。佐々木が、仮に6打者連続三振やったら……。次の回も投げさせるかね」
江夏さんは「どうかな。でも、もしそうなったら、投げさせてもらいたいよね」と期待する。
最後に出場選手たちに向けて二人からエール。
「選ばれたからには、打ってはホームラン、投げては三振を奪うつもりでやってもらいたい」(江夏さん)
「ファンはこの選手がどういうものを持っているか期待をするわけだ。それにあったプレーをしてほしいね」(田淵さん)
(肩書は当時、一部敬称略)(本誌・唐澤俊介)
※週刊朝日 2022年8月5日号