──やがてチームを率いるようになると、自分の目の届かないところで誰かがミスをしてしまうこともあるだろう。

 そんな時は、犯人を明らかにすることよりも、トラブルに至った“仕組み”を見極め、それを解決することに注力すべきだという。

佐久間:何かトラブルが発生すると、みんなすぐに犯人を特定しようとしますよね。でも、ミスの原因を個人の能力に求めると、その人の成長を待たなければいけなくなる。

 それよりも、例えば業務分担の問題とか、チェック体制の問題とか、チームの仕組みを見直せば短期間で解決できる問題ってたくさんあるんです。

 そもそも僕は、自分にも他人にも過度な期待はしていなくて。飛び抜けた天才が出てきてくれたらうれしいですけど、「人は失敗するもんだ」と思ってベースを作っているから、失敗しても怒らない。

 それは自分に対してもそうです。自分の失敗も必要以上にへこまないというか、「俺をこうさせた仕組みが悪い」と思うようにしています(笑)。それって、やりたいことを実現するプロセスにおいて、すごく大事なことなんですよ。

──常に多くの番組を抱え、1年先まで仕事の予定が埋まっているという佐久間さん。仕事人間のように見えるが、本書で繰り返し語るのは「守るべきは仕事よりもメンタル」ということだ。

佐久間:実を言うと僕自身、ギリギリまで頑張った結果、心が折れてしばらく引きこもったことがあって。だからこそ、メンタルマネジメントを自分の一番に置くことを貫いてきました。

 たかが仕事、たかが会社。嫌なものや苦手なものはできるだけ避けて、“戦わずして”自分のできることをやっていく。それが最も大事なことだと思うんです。

 それでも悩んでしまう時は、「給料分働けば十分だ」と思うようにしてください。

 仕事に熱狂して、自分のすべてを懸ける人もいますけど、それは絶対的な正義ではなく、あくまでも性格や生き方の問題。仕事に対してハングリーじゃなくても、やるべきことをやり、給料分働けば、それで十分「プロ」ですから。

(編集部・藤井直樹)

AERA 2022年5月30日号