私たちは皆ウクライナを助け、武器を供与し、経済的・人道的な援助を続けなければなりません。戦争が続く限り、支援し続けなくてはならないのです。フィンランドでは、ウクライナから逃れてきた多くの人たちを迎え入れていますし、彼らに必要なすべてのサービスや働く機会を提供しています。私たちの連帯は強い。戦争が終わったら、ウクライナが自分たちの社会を立て直せるよう、助けなくてはなりません。

■国民の防衛意識強い

──フィンランドは18歳以上の男子には約6カ月以上の兵役(民間役務の選択も可能)を課し、終了後も訓練に招集されることもある。防衛費は国内総生産(GDP)の2%近くにのぼる。首都ヘルシンキには広大な地下シェルターがめぐらされ、歴史的、地理的なリアリズムに向き合う国民の防衛意識は強い。

 フィンランドがNATOへの加盟を正式決定すると、ロシアはどう反応するのか。ロシア外務省はすでに、大統領と首相のNATO加盟申請の声明を受け、「外交政策の過激な変更だ」と声明を発表。4月と5月、ロシア軍機がフィンランド領空を2度にわたり侵犯したとフィンランドメディアは発表した。

マリン首相:私たちの決断に対して、ロシアがどんな行動をしかねないかわかりません。しかし、私たちは自分たちの利益に基づいて決断しなければなりませんし、その権利があります。決断は誰に対抗するものでもありません。

──NATO加盟申請という重大決断の直前の訪日だった。本誌インタビュー後の11日の夕刻、マリン首相は岸田文雄首相と会談を行った。そこでも話題の中心はウクライナ問題だった。会談後の記者会見で、マリン首相はこう述べている。

「ロシアの侵攻に対する日本の協力、リーダーシップを高く評価しています。対応は全世界で行うべきです。日本も制裁をして、ウクライナを支援しています。フィンランドがNATOに加盟申請する可能性について、岸田総理に申し上げました。もしフィンランドが歴史的なステップを踏むのであれば、それはフィンランド国民の安全を守るためです。NATO加盟で共通の価値観を支える国際社会全体が強化されるはずです」

 3日間の訪日後、15日にはフィンランドはNATO加盟を申請するとの政府方針を決定した。

 18日、フィンランドはスウェーデンと同時にNATOへの加盟を申請。ストルテンベルグ事務総長は、温かく歓迎し、早急に結論を出す旨を述べた。NATOは6月末の首脳会議で新たな安全保障戦略を議論する。

(構成/朝日新聞編集委員・秋山訓子)

AERA 2022年5月30日号より抜粋

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