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 AERAは5月11日、フィンランドのサンナ・マリン首相に単独インタビューを行った。首相がニーニスト大統領とともにNATOについて「フィンランドはただちに加盟申請しなければならない」とする共同声明を発表した日の前日だ。中立の立場を取ってきたフィンランドがNATO加盟に踏み切った背景とは。AERA 2022年5月30日号の記事から。(全3回の1回目)

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──北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請について、「議会や政府、関係機関と検討中」と慎重に言葉を選びながらも、マリン首相は「私たちはきわめてすぐに決断するだろう」と力強く語った。実際、5月18日、申請した。

マリン首相:主な理由はロシアのウクライナ侵攻です。これが、ヨーロッパの安全保障環境をすべて変えました。私たちは、ロシアが隣国に、ウクライナに、極めて侵略的に振る舞っているのを目の当たりにしています。このようなことがフィンランドで絶対起きないようにしたいのです。

──決断の背景には、フィンランドの地理的状況や歴史がある。フィンランドは1300キロあまりにわたってロシアと国境を接している。1809年から1917年まではロシア領であり、第1次世界大戦中にロシア革命の際に独立した。だが、第2次世界大戦中には2度にわたってソ連の侵攻を受けて、領土を一部割譲した。

マリン首相:私たちは勇敢であらねばならないし、フィンランド国民の安全と未来を守るために、今、決断しなければならないのです。そのためにフィンランド国内で広く合意をとりつける努力もしてきました。隣国スウェーデンとも調整してきました。

──フィンランドは第2次世界大戦後の48年、「友好協力相互援助条約」をソ連と締結。外交や軍事で強い制約を受け、EU(欧州連合)の前身、欧州共同体(EC)にも加盟できなかった。

ソ連崩壊後の95年、EUに加盟したがNATO加盟を見送るなど、常にロシアの意向を気に掛ける外交を強いられてきた。

マリン首相:フィンランドはEUの構成国であり、EUは日本や米国、イギリスなどと協調しています。そしてもちろん国連の加盟国でもあります。私たちはロシアの行動を非難し、次の二つのことをせねばなりません。ロシアに制裁を加え、ウクライナを支援し続けることです。

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