トルコのエルドアン大統領(gettyimages)
トルコのエルドアン大統領(gettyimages)

 フィンランドとスウェーデンは5月18日、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に申請した。ところが、その数日前、NATO加盟国であるトルコのエルドアン大統領は「われわれは賛成しない、彼らは厄介ごとを持ち込むべきでない」と、冷や水を浴びせていた。ロシアに対抗するNATOの結束をぶち壊すトンデモ発言のように聞こえるが、ロシアとウクライナの仲介役としてNATO加盟国の首脳たちに精力的に働きかけてきたのもエルドアン大統領である。歯に衣着せぬ物言いで知られるエルドアン大統領だが、この不可解とも思える動きをどう理解すればよいのか。トルコの外交を中心に研究してきた日本貿易振興機構アジア経済研究所の今井宏平さんに聞いた。

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 4月以降、ウクライナでの戦局は膠着状態に陥り、断続的に行われてきたロシアとウクライナの和平交渉は暗礁に乗り上げている。その交渉をなんとかまとめようと、精力的に動いてきたのがトルコだ。

 今井さんは、こう分析する。

「侵攻直後の3月にはエルドアン大統領とチャヴシュオール外相が非常に活発に動いていました。多くの首脳と会談して、しっかりと根回しをしたうえでロシアとウクライナの仲介に臨んでいます。トルコのいいとこ取りと見られないように、自身の考えをNATO加盟国などに周知したうえで動いていたことがうかがえます」

 そんなエルドアン大統領の印象について、「しっかりと主張する、リーダー気質」と、今井さんは語る。さらに、「非常に義理堅い性格といわれている」とも。

肌が合わない間柄

 では、ウクライナのゼレンスキー大統領との関係はどうだったのか。

「当初、ゼレンスキー大統領との関係は微妙と見られていました」

 2019年に大統領に就任した44歳のゼレンスキー氏はもともとコメディアンだった。一方、エルドアン大統領は学生時代から政治活動に打ち込んできた老練な指導者である。肌が合わないのは当然だろう。

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プーチンとの「接し方」