自分で小さな目標を作って、それに向かって挑戦すること。そして一度何かを始めたらやめないこと。若いころから無意識のうちに続けてきた思考や行動が、妻の死から立ち直るときにも役立つことになったのです。
今はだいたい、こんな一日を過ごしています。朝起きたら、まずは1時間、筋トレとストレッチ。シャワーを浴び、朝ごはんを食べて片付けし、仕事に出る。朝食は牛乳、ヨーグルト、ソーセージ2本、卵かけご飯、納豆、ヤクルトが定番。毎日、最低1万歩は歩くことを心がけているので、通勤時には一つ手前の駅で降りて歩くように。寝る前にも、30分ほどのストレッチを欠かしません。
料理は妻がいるときからしていましたが、簡単でおいしく作れるレパートリーがいくつかあります。最近よく作るのが、いろんな野菜を入れて、フォン・ド・ボーと魚のだしで30分ほど煮込んだ野菜スープ。大きな鍋で、1週間分まとめて作っています。
今81歳ですが、かなえたい四つの目標があります。一つ目ががん検診の受診率を高めること、二つ目ががんサバイバーを支援すること、三つ目が在宅死を希望するがん患者が実現しやすい体制を作ること、四つ目が遺族のケアであるグリーフケアを医療の体制の中に取り入れること。そして私も妻と同じように、最期は家で迎えたい。日々の運動は、高齢単身者である自分が、在宅死を全うできるようにするための備えでもあります。
天国にいる妻が、今の私を見たら何て言うかって? 「なかなかよくやってるんじゃないの」って言ってくれるんじゃないかな。
(構成/フリーランス記者・松岡かすみ)
※週刊朝日 2022年6月3日号