ひまわり市場(山梨県北杜市)の那波秀和社長
ひまわり市場(山梨県北杜市)の那波秀和社長
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 市民の暮らしを支えるスーパーが転換期を迎えている。人口減少を前に、生き残りをかけた合併や買収など再編の動きが相次ぐ。そんな中、独自の経営路線で地元に愛される店がある。小さくとも元気な「ご当地スーパー」の魅力を探る。

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 この4月に日本チェーンストア協会が発表した2021年度の全国のスーパー売上高は13兆3389億円で、前の年度に比べて3.4%増えた。既存店ベースでは同3.1%増で、伸び率は1991年度以来、30年ぶりの大きさだ。

 コロナ禍でのスーパーの好調ぶりは、ほかの業態と比べると際立つ。経済産業省の商業動態統計によれば、スーパーの売り上げはコロナ直後の20年に、前の年に比べて13%も伸びた。コロナ後に売り上げが減ったコンビニや百貨店とは対照的だ。

 だが安心はできない。この先には少子高齢化や人口減少が待つ。市場そのものが縮み、少ないパイをめぐってコンビニやドラッグストア、さらにネット通販といったほかの業態やサービスと争わなければいけない。

 足元でスーパーの買収や再編が進むのは、こうした危機感を映す。流通大手エイチ・ツー・オーリテイリング(大阪市)が昨年、大阪や兵庫などを基盤とする老舗、関西スーパーマーケット(現関西フードマーケット、兵庫県伊丹市)の統合をめぐり、首都圏が地盤のオーケー(横浜市)と争ったのは記憶に新しい。

 オータニ(宇都宮市)は昨年4月、アークス(札幌市)の完全子会社になった。独立路線を取るとみられていた中・四国地方で展開するフジ(松山市)がイオンの傘下入りを決めたことは、関係者に衝撃を与えた。

 そのイオンやセブン&アイ・ホールディングスといった大手小売りグループは、傘下スーパーの再編を各地で進める。大手の傘下に入る店が目立つのは、商品の仕入れや物流の効率化が見込めるからだ。資金の調達力や知名度アップを期待するところもあるだろう。

 しかし、こうした動きと一線を画すスーパーも少なくない。代表的なのが、地域密着型の経営で地元から支持される「ご当地スーパー」だ。

「ご当地スーパー研究家」を名乗る菅原佳己(よしみ)さんが言う。

「商品の数や価格面で大手と真っ向から勝負するのは難しいのは確か。でも、古くからその地域に根差した経営を続けるうち、品ぞろえはおのずと地元の食生活や文化に合わせたものになっていきます。その店特有の商品や雰囲気が、ご当地スーパーの大きな魅力。その店にしかない商品は、地元だけでなく、全国からも支持を得ることができます」

菅原佳己さん(写真=本人提供)
菅原佳己さん(写真=本人提供)
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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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