誤審や疑惑の判定がクローズアップされるたびに、批判の的になる審判だが、その一方で、「さすが!」とファンを唸らせるような“神判定”で名を馳せた審判もいる。
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ビデオ判定がない時代に、誰が見てもアウトと思われた本塁クロスプレーをセーフと判定し、翌日の新聞写真によって、その目の確かさが証明されたのが、岡田功審判だ。
問題のプレーは、1969年10月30日の日本シリーズ第4戦、巨人vs阪急の4回裏に起きた。
3点をリードされた巨人はこの回、土井正三、王貞治の連打で無死一、三塁とし、4番・長嶋茂雄がフルカウントから空振り三振に倒れた際に、ダブルスチールのスタートを切った。
だが、セカンド・山口富士雄が、捕手・岡村浩二の送球を二塁ベース手前でカットし、すかさずバックホーム。三塁走者・土井は岡村のブロックに阻まれ、本塁タッチアウトになったように見えた。ところが、岡田球審は「セーフ!」をコールするではないか。
このプレーの直前、長嶋のカウント1-2からの4球目の空振りを取らず、ボールと判定されたことにも激しく抗議していた岡村は、度重なる不利な判定にぶち切れ、ミットをはめたまま岡田球審の顎に左ストレートを繰り出した。
岡田球審が岡村に日本シリーズ史上初の退場を宣告すると、西本幸雄監督とコーチ陣が食ってかかり、たちまち抗議の輪が広がる。岡村も「あれは絶対の自信を持ったブロックだった。完全なアウトだった。1発で退場というのはカッコ悪いので」と輪の中に乱入し、もう1発岡田球審にパンチをお見舞いした。
西本監督も「巨人が見逃せば全部ボールになる。ホームをつけば全部セーフになるのではかなわん。あれがセ・リーグを代表する審判というのですか。このことに関しては、何らかの形ではっきりしてもらわんと、日本シリーズをやる意味はない」と口を極めて非難した。
一方、土井は「オレはしょっちゅう冗談で嘘をつくが、あれだけは信念を持ってセーフだと言えるよ。だって、岡村の両足の間をくぐって、オレの左足がホームを突いたんだもの」と主張した。
はたして、翌日の新聞に土井が岡村のタッチをかいくぐって本塁ベースを踏んでいる“証拠写真”が掲載され、岡田球審の判定が正しかったことが証明された。