結局この秋を3連敗で終えると、ゴールドは故障による長期休養の末に引退。種牡馬入り直後は芽が出なかったが、アメリカを経由してブラジルへ輸出されると、ここで思わぬ大成功が待っていた。

 現地での産駒がブラジルダービーなどG1を勝ちまくり、2020年にはアイヴァーが米G1シャドウェルターフマイルを制覇。21年にもインラブが米G1キーンランドターフマイルを勝つなど、産駒たちが南米および北米で大活躍したのだった。

 アグネス軍団は自前の血統をつなぐだけではなく、外国産馬にも何頭かの活躍馬が存在した。世界的な名種牡馬ダンジグの産駒アグネスワールドは、最強世代の呼び声もある98年クラシック世代の一角。もっとも自身は短距離を主戦場としたためスペシャルウィークやセイウンスカイとは対戦がなかった。

 2歳時に芝の函館3歳ステークス、ダートの全日本3歳優駿を勝つなど早くから活躍していたワールドだが、真価を発揮したのは古馬になってから。99年の夏に小倉でオープン戦を連勝すると、陣営は欧州遠征を敢行。10月にロンシャン競馬場の芝1000メートル直線コースで行われたG1アベイドロンシャン賞を見事に制してみせた。

 その暮れのG1スプリンターズステークスではブラックホークの2着、翌春のG1高松宮記念ではキングヘイローの3着と国内ではG1を勝ちきれなかったアグネスワールドだが、再度の欧州遠征では英G2キングズスタンドステークス2着後に臨んだG1ジュライカップで、2度目の欧州G1制覇を達成した。これは日本調教馬による初の英国重賞勝ちでもあった。

 帰国後のG1スプリンターズステークスでは最低人気馬ダイタクヤマトにまさかの逃げ切りを許してまたも2着。続く米国遠征でのG1ブリーダーズカップスプリント(ダート6ハロン)8着を最後に引退した。真価を発揮できるのが直線コースかつ芝1000メートルまでという、日本では実力を発揮しきれない不器用な直線番長だった。

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破天荒すぎた冠名アグネスの名馬は?