■目標はノウハウを受け継ぐこと
――NAOKIさんが音響監修を手がけたTOHOシネマズの映画館は、立川立飛からはじまり、池袋、日比谷、大阪、福岡と広がっています。良い音で映画を楽しみたいというニーズも増えているし、すごく意義深い仕事ですよね。
お客さんに喜んでもらえているとしたら嬉しいけど、映画館の音作りは僕の本職ではないし、自分が監修したことを誰も知らなくてもいいと思ってるんです。“デリコサウンドの映画館”なんて謳われてたら、ちょっとイヤでしょ(笑)。映画館に来た人がストレスなく映画を楽しめて、かつ映画監督の意図や思いが正確に伝われることがいちばんですからね。映画館は文化の発信地だし、その地域の若い人達が最高な環境で芸術に触れられるならそれだけで最高じゃないですか。豊かな芸術に触れて心が豊かになった若者が大人になって、また今度は我が子を連れて映画館を訪れる。映画館て、そういう意味で地域にとって人々の心を育んでくれる大切なスポットだと思っているので、真心込めて調整してます。
今考えているのは、僕の経験やノウハウを多くの人に伝えること。すでにTOHOシネマズの若い技術者の皆さんに講習会や研修をはじめているんです。
――NAOKIさん自身も、映画の音響監修を通して得られたものが多そうですね。
それはすごくありますね。今、LOVE PSYCHEDELICOの新作をレコーディングしているんですが、たとえばパーカッションを録るときも、聴けば一瞬で「〇〇キロヘルツを少し上げればOK」ということがすぐにわかるので、セッティングがアッという間に終わる。KUMIも「なんか音作るの凄く早くなったね」って驚いています(笑)。
(森 朋之)
NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)/ラブ・サイケデリコは、ボーカルのKUMIとギターのNAOKIの二人によるロックデュオ。2000年4月21日、シングル『LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~』でデビュー。2001年1月に発表された1stアルバム『THE GREATEST HITS』は200万枚、翌年2002年1月に発表された「LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA」も100万枚を超え、2作連続ミリオンとなる驚異的なセールスを記録した。以降もNAOKIの卓越したギターテクニックと印象的なリフ、日本語と英語が自由に行き交うKUMIのヴォーカルスタイルによって独自の音楽スタイルを確立し、人気を博している。
2020年よりTOHOシネマズの音響監修を担当。これまでにNAOKI氏が監修したスクリーンは以下。
立川立飛(SC5轟音シアター、SC7プレミアムシアター)、日比谷(SC1プレミアムシアター)、池袋(SC2轟音シアター、SC6プレミアムシアター、SC10プレミアムシアター<ATMOS))、大阪・セブンパーク天美(SC6轟音シアター、SC10プレミアムシアター)、福岡・ららぽーと福岡(SC3プレミアムシアター、SC4プレミアムシアター、SC7轟音シアター)