■軽い運動習慣で腎臓機能が改善
食生活の改善と並んで腎臓を守るために重要なのは、適度な運動だ。
東北大学名誉教授で山形県立保健医療大学理事長を兼務する上月正博医師らの研究では、慢性腎臓病の患者が軽い運動を習慣化すると、血中の老廃物の濃度を示すクレアチニン値が低下し、尿たんぱくも減少することが判明。腎機能(GFR)が向上し、人工透析の回避につながるなど、数々の効果が得られることがわかってきた。
上月名誉教授らが開発したのが「腎臓リハビリテーション」(以下、腎臓リハビリ)。大半が1回1分ほどでできて、誰でも取り組みやすい簡単な体操や運動ばかりだ。これらの1分体操を体調や病気の状態に応じて組み合わせて繰り返し行うことで、心肺機能の向上や生活体力の維持・増強、腎機能の改善など多くの健康効果が得られるという。
日本では腎臓リハビリに健康保険の適用を受けられるようになり、腎臓リハビリテーション指導士制度も確立。2021年1月時点で、全国で447人の腎臓リハビリテーション指導士が活躍している。
「腎臓リハビリテーションガイドラインが英訳され、国際腎臓リハビリテーション学会も設立されました。腎臓リハビリは目下、腎臓病の世界最先端の研究分野になっています」(上月名誉教授)
なぜ、運動が腎臓を鍛えることになるのか。
前述した腎臓の濾過機能を担う糸球体という毛細血管の塊には「タコ足細胞」という細胞が張り付くように存在している。名前の通り足を伸ばしたタコに似た形をしており、それらの足が互いにからみあってフィルターとして働き、通常は分子の大きなたんぱく質を通さないようにしている。
ところが、たんぱく質の摂りすぎや高血圧、高血糖などが続くと、糸球体の入り口の血管に過剰な圧力がかかり、糸球体のタコ足細胞がはがれてしまう。すると、フィルターの目が粗くなり、本来濾過されるべきたんぱく質などが尿中に流れ出てしまう「たんぱく尿」を引き起こす。