健康な人は普段、あまり気にかけることのない腎臓。実は、中高年になっても腎臓の機能を維持できているかどうかは、老化の進行と密接な関係があるという。腎臓を守り鍛えて人生100年時代を健康に生きるために、どんなことに気をつけるべきなのか──。
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人間は日々様々な栄養素や水分を摂取する。そのうち、体内に採りいれるべきものは採りいれ、出すべきものは出して、生命を保っている。その出し入れが滞って、不要な老廃物が体内にたまり始めると、内臓の機能が低下。代謝がうまくいかなくなり、体の不調や老化現象が表れる。
抗加齢医学の第一人者で、『腎臓が寿命を決める』(幻冬舎新書)の著書がある自治医科大学の黒尾誠教授がこう語る。
「出し入れを精密にコントロールしている臓器が腎臓です。不要なものを排泄する腎臓の力が衰えると、健康が損なわれ、老化が加速していきます」
こうした腎機能が3カ月以上低下した状態が、慢性腎臓病だ。慢性腎臓病は日本では成人の8人に1人が患う国民病で、日本腎臓学会の調査によれば慢性腎臓病患者数は約1330万人。その数は年々増える傾向にある。悪化するまで自覚症状がないため初期の発見が難しく、糖尿病や高血圧との合併症により表面化するケースが多いという。黒尾教授はこう説明する。
「慢性腎臓病の素地は、血液の濾過(ろか)機能を担うネフロンの数が減少することによる『腎臓の老化』。進行すると最終的には尿毒症を起こし、人工透析や腎移植が必要となってしまいます」
現在、日本の人工透析患者は34万人以上で、毎年増え続けている。ひとたび人工透析が必要になれば、日常生活に大きな負担となる。そんな事態を避けるためにはどうすればいいのか。そのことを考える前に、まずは腎臓の仕組みを見てみよう。
腎臓は背中側の腰の少し上に左右一個ずつある握りこぶし大の臓器で、血液を濾過してきれいにする役割を担っている。