また、深刻さを増すエネルギー危機に対しては、再エネよりも原発再稼働に熱心だが、日本海側にずらりと並ぶ原発を攻撃対象にされれば、日本はひとたまりもない。
これらの危機への対応は後回しにして、軍備増強が最優先され、武器の高度化による表面的な戦争遂行能力だけが強化されて行くのを見ると、彼らは一体何を考えているのか不思議に思う。
そんな折、岸田首相がバイデン大統領に媚びるように防衛費増額を約束する姿を見ていて私は思った。自民党歴代のリーダーたちの危機の判断基準は、米大統領を怒らせたら大変だということではないのか。
「(防衛)予算を増やさないとなったら笑いものになる」という安倍元首相の言葉もそうした意識に連なる。欧米列強のリーダーに誉められることで彼らに伍する地位を得たと思いたい。それが自民リーダーたちの「自己実現」なのだ。だからその達成が危ういとなれば、彼らにとっての危機となる。とんでもない「危機意識」だ。
岸田首相は、自らの自己実現の危機ではなく、国民生活の危機への対応に全力を傾けるべきだ。
※週刊朝日 2022年6月17日号から