■「正しい排便姿勢」でいきまずに出る
解剖学的根拠にもとづく、正しい洋式便器の座り方について、中島医師が紹介します。
「多くの人はまっすぐ便座に座っていると思いますが、その姿勢だと、肛門につながる部分が『く』の字に曲がっています。これでは便が通過しにくいのです。両ひじを太ももの上に置き、背筋を伸ばして35度ほど前かがみになると、直腸から肛門までがまっすぐになるので、便が通りやすく、肛門も開きやすくなります」
その姿勢はさながら、オーギュスト・ロダン作のブロンズ像「考える人」のポーズのよう。
「子どもや小柄な人はこの姿勢が取りにくいので、台になるものを足元に置いて、足をのせるのがおすすめです。アメリカでは、トイレ用の足置き台が販売されているんですよ」(中島医師)
アメリカの研究では、トイレ用足置き台を使用することで、排便後の残便感や排便時のいきみが減少することが報告されているといいます。
■治療が必要な「病気」だと、ようやく知られ始めた
「治療の一つの目標として、便器に座って12秒以内に排便を終えられるようになることを、私は提唱しています。哺乳類はからだの大小に関係なく、12秒以内で排便するという報告があり、人間も実現は可能です」(同)
冒頭で紹介した便秘の診療ガイドラインが日本で刊行されたのは17年が初のことで、便秘は治療が必要な「病気」だと注目されるようになったのは、ここ数年です。しかし、とくに高齢者の便秘は社会的にも大きな問題で、脳梗塞など循環器の発作のリスクにもなります。
この記事で紹介した生活療法は、治療法の一部です。一人で試行錯誤するよりも、まずは専門の医師を受診することをおすすめします。
(文・狩生聖子)
※週刊朝日2022年6月17日号より