さらにホームをかわると経済的な負担が大きくなるのでは、と不安に思うことも要因の一つです。入居時に一時金を支払うシステムをとるホームが多いため、引っ越すたびにまとまった一時金を用意しなければならないからです。

「しかし最近は、入居一時金が必要ないホームも増えています。また、例えば認知症の問題行動がおさまって、ほぼ寝たきりになったというような場合、寝たきりの介護が得意なホームのほうが毎月の家賃が安価、というようなケースもあり得ます。一概に転ホームはお金がかかりすぎるというわけではありません」(小嶋氏)

■あれもこれもサービスを求める考えは改めたい

 もう一つ、考えられる「転ホーム」が進まない要因として、私たち利用者の意識・姿勢があります。要介護=ホーム入居と漠然と考えている状況にあって、果たして前述したような高齢者ホームごとの得意不得意、特徴を正しくとらえて、適切に選択することができるでしょうか。

 現状では、ホーム側が提供するサービスの価値について、利用者の理解が追いついていないと小嶋氏は言います。利用者はそのホームの得意なところをとらえるのではなく、「オールマイティーなサービス」を望みがちだというのです。その結果、入居者本人にはそれほど必要でないサービスをオプションのように求め、その分、入居費用が余計にかかっているようなケースも多いようです。

「ホームの選び方についての相談は多いのですが、ほとんどがあれもこれも提供してもらえるほうがいいと話されます。例えば認知症の問題行動をきちんとみてもらえるところ、なおかつリハビリもさせたいからその設備も充実しているところ、持病があるので提携病院がしっかりしているところ、と条件がいくつも重なっていきます。根底にはやはり、ホームを途中でかわりたくない、最期までみてもらいたいという気持ちがあるのでしょう。それでは入居者の状態に介護サービスの内容を合わせるのではなく、逆に、ホームの状況に合わせることになってしまいます」(小嶋氏)

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利用者側がホームの提供する価値を理解すれば