オールマイティーなホームを求める気持ちもわかりますが、やはりそのときどきの入居者の状態を見極め、明確な目標をもって、そこに焦点を当てられるホームを選ぶべきでしょう。そのためには転ホームも念頭に置いておく必要があります。
利用者側がホームの提供する価値を理解すれば、ホーム側は得意なサービスを磨き上げてさらに特徴づけ、過剰な、あるいは不得意なサービスを無理に行うこともなくなります。目的に応じた転ホームが当たり前になれば、ホームが提供するサービスもさらに向上するでしょう。
「まず知ってもらいたいのは、高齢者ホーム選びは労力と時間がかかるものだということと、我慢して入居するのではなく、納得して最適のサービスを受けるために入るものだということです。いざとなってあわてるのではなく、親が高齢になったら、あるいは自身が65歳以上になったら、高齢者ホームについてよく学んで、詳しくなってほしいと思います。そのことが入居者の安全・安心・快適に直結すると考えます」(小嶋氏)
(文/別所 文)
小嶋勝利(こじま・かつとし)
ASFON TRUST NETWORK常務取締役。神奈川県生まれ。介護付き有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画に従事。2006年有料老人ホームのコンサルティング会社ASFON設立に参加。10年有料老人ホームなどの紹介を手がける「みんかい」をグループ化。老人ホームの紹介やホームの運営コンサルティングをおこなっている。公益社団法人全国有料老人ホーム協会業務アドバイザーも務める。著書に『誰も書かなかった老人ホーム』『老人ホーム リアルな暮らし』『間違いだらけの老人ホーム選び』などがある。