2008年ごろからアルコールに頼るようになった。2018年7月、主治医に勧められて妻がつけていた飲酒の記録(photo:朝日新聞社・永田豊隆)
2008年ごろからアルコールに頼るようになった。2018年7月、主治医に勧められて妻がつけていた飲酒の記録(photo:朝日新聞社・永田豊隆)

■救急搬送で断られた入院、制度は「すき間」だらけ

 生き死にに関わって深刻なのは、精神科医療と身体科医療のすき間だ。

 14年、妻はアルコール性の肝機能障害が重症化して救急搬送されたが、総合病院で入院を断られた。死を覚悟したが、最終的には精神科病院が引き受けて一命を取り留めた。

 その後、精神障害が理由で治療を断られるケースが妻だけでないことも知った。身体の病気は精神科で治療するには限界があるが、身体科の医師が「精神面のケアができない」として敬遠することが珍しくないのだ。二つの領域の狭間で、患者は治療を受ける権利を奪われる。

 現状では、身体合併症を診てくれる医療機関を家族が自力で探さなければならない。せめて救命を終えるまで身体科で治療をしてから精神科に引き継ぐ態勢を徹底して、すき間をなくせないものか。今も私は、いざというときに身体の病気を診てもらうことができないのではないかという恐怖感を抱え続けている。(朝日新聞記者・永田豊隆)

AERA 2022年6月13日号より抜粋