「スシロー」を手がけるフード&ライフカンパニーズの水留浩一社長
「スシロー」を手がけるフード&ライフカンパニーズの水留浩一社長

 村松弁護士によると、そもそも景表法は正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といい、商品やサービスの品質や内容、価格などを偽って表示することを規制し、消費者が良い商品やサービスを選ぶ環境を守るための法律だ。

 さらにスシローで問題となった「おとり広告」とは、その商品が実際には取引(スシローの場合は客からの注文)ができないにもかかわらず、客を集める手段として広告を表示することを指すという。

「スシローの場合、一定の時期にその商品(料理)の提供停止を決定していたのに、そのまま宣伝を継続していたなどの事実から、消費者庁は『実際には取引(客からの注文)に応じる意思がなかった』と判断し、措置命令が出されたのだと思います」(村松弁護士)

 一連のできごとに対して、ネットでは、

「宣伝にだまされた」
「商品がないのに客を集めるのは詐欺じゃないのか」

 など、怒りの声が多く上がっている。家族連れが多く集う庶民的なイメージの店だけに、裏切られたという思いはより強いのかもしれない。

 消費者庁と公取委は、スシローに限らず、こうした事案があった場合は情報提供するよう消費者に呼び掛けている。

「もともと企業側としては、『まずは商品を購入してもらえれば』『まずはお店にきてもらえれば』との考えがあります。そして、その意識が過剰になりやすいことから、規制するために景表法があります。一方、現代の消費者は、実際に店を訪れた人や商品を購入した人の評価などを手に入れて、自分で良しあしを評価します。企業側が想像する以上に、広告と実際の商品が釣り合っているかを見る目が厳しくなっているのかもしれません」(村松弁護士)

 宣伝で“釣りたい”企業側と、シビアな目を持つ消費者側の意識のギャップが大きくなっているということかもしれない。(AERA dot.編集部・國府田英之)

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら