つまり、6月10日から外国人観光客の受け入れを再開する、というのは、「実際にはその日に『ERFSの受付開始をする』ということです」と。
ハナツアーは当初、6月下旬から訪日観光ができると見込んでいた。しかし、商品内容や料金を確定するのに予想以上に時間がかかり、ツアーのスタートは7月にずれ込みそうだという。
「いま、ツアーの中身をつくり直して新たな料金を設定する作業に追われているわけですが、新型コロナ対策のため、自由行動は認められていません。それをお客様が受け入れていただけるかどうか、定かではありません」
さらに頭の痛いのが、PCR検査の問題だ。
「韓国に帰国する際、日本出国48時間以内のPCR検査、もしくは24時間以内の抗原検査の陰性証明書が必要になります。しかも、英文で」
そのため、ツアー日程に合わせて外国人団体を受け入れてくれる検査業者を見つけなければならない。
「特に土日も検査できないと、デイリーで商品を設定できません。それを探すのが結構大変で。しかも、料金が2万円くらいする場合もある。格安の5万円前後でツアーを販売しているのに……。でも、これは日本とは関係のない話です。韓国政府が入国時の防疫基準を変えるのを待つしかありません」
旅行業界が待ち望んだ訪日観光の再開だが、一気に韓国からの観光客が増えるような状況にはなさそうだ。では、ほかの国からの観光客はどうだろうか。
■回復が遅れるアジア地域
世界に目を向けると、欧米を中心に外国人旅行者の数は着実に増加している。国連世界観光機関(UNWTO)が今年3月に集計したデータによると、コロナ前の19年と比較して欧州の国々を訪れる外国人観光客は61%、北米も59%に回復した。なかでも回復が著しいのはカリブ海諸国と、地中海に面した南欧の国々で、それぞれ74%、73%まで客足が戻っている。
それとは対照的に極端な落ち込みが続いているのがアジア太平洋地域だ。特に北東アジアはコロナ前の4%、東南アジアも5%と、惨憺たる数字である。
厳しい水際対策をとってきた中国や日本を含む北東アジアの数値が低いのは理解できる。しかし、東南アジア諸国の対応は異なるはずだ。例えば、外国人観光客がもっとも多いタイでは、昨年から段階的に水際対策を緩和し、今年5月初旬、プラユット首相は「23年には外国人観光客はコロナ前の半数、約2000万人に回復する」との見通しを示した。しかし、4月にタイを訪れた外国人観光は約29万人と、最盛期の1割にも届かない状態だ。