「止めて、はねて、払う」がある「歩」。一つずつ丁寧に。
「止めて、はねて、払う」がある「歩」。一つずつ丁寧に。
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デジタル化が進む社会でも、手書きの機会は意外に多いもの。礼状や詫び状、入学願書、公的機関への提出書類といった肝心のシーンで、美しい字はきらりとした存在感を放ちます。自分の字に自信が持てない、どこを直したらよいかわからないといったお悩みに、書家の大平恵理先生は「5つのポイントに気を付けるだけで、驚くほど美しい字に変わる」といいます。『読むだけで自分の字がみちがえる!』(朝日新聞出版刊)より一部抜粋して紹介します。

【一工夫するだけで、いつもの字が美しく変身】

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 大切なのは、字を書くときに「意識」をするということ。そう説くのは、日本書字文化協会会長で書家の大平恵理さん。気を付けるべきポイントを意識することで、書く速さや筆圧に影響し、リズムが生まれ、字に変化が現れるといいます。何を意識して書けばよいのか、5つのポイントをみていきましょう。

ポイント1 止め・はね・払いは忠実に

「なぜか字がうまく書けない」という人は、もっとも基本的な「止め・はね・払い」をおざなりにしていることが多いようです。「止め・はね・払い」は、ずばり「線の最後をどう締めくくるか」ということ。最後をしっかり、きれいに書き終えることが、字の全体のバランスを左右し、書くリズムをつくります。

 字を書くことを車の運転に例えてみましょう。「止め」は赤信号でぴたりと止まる。「はね」は赤信号で一度止まり、その後青信号に変わって発進する。そして「払い」は、青信号で止まらずスムーズに進んでいくイメージです。

「筆圧」も意識すると、さらにリズムや流れが生まれます。「止め」は筆圧3、「はね」は筆圧3で止まったら、方向を変えて「3→2→1→0」ではねます。「払い」は筆圧3で書いてきた線を、そのまま「3→2→1→0」と筆圧をゆるめながら払います。

 幼い頃に初めて字を習ったときの基本を思い出し、意識しながら書いてみると、字の形が驚くほど変化します。

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「折れ」と「長い線」のポイント