逆ギレというほどではなかったが、プロ初登板にもかかわらず、高校を出たばかりの18歳とは思えない度胸の良さを見せたのが、西武・松坂大輔だ。
99年4月7日の日本ハム戦、開幕4戦目でプロ初先発初登板のマウンドに上がった松坂は、1回に自己最速の155キロで片岡篤史を空振り三振に仕留めるなど、“平成の怪物”の名にふさわしい快投を見せる。
そして、5対0とリードした5回に事件が起きる。あと1人で勝利投手の権利を得る2死無走者、松坂はフランクリンをカウント2-1と追い込んだあと、胸元に食い込む151キロ直球を投じる。
のけぞって尻もちをついたフランクリンは、怒りをあらわにしてマウンドに詰め寄ろうとしたが、松坂は「あれぐらいで怒るとは」と一歩も引かずに睨み返した。
両軍もみ合いの中で、先輩の橋本武広になだめられ、余裕の笑顔まで見せた松坂は、その後のフランクリンとの対戦でも臆することなく内角を攻めつづけ、8回を5安打9奪三振2失点で見事プロ初勝利を挙げた。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。