5月23日、開幕から2カ月しか経っていない段階でのコーチ配置転換に周囲は驚かされた。だが、「内輪の話で、別に何かノリに問題があったわけでも何でもない」と立浪監督は平然と語ったことからも想定内の人事異動だったようだ。

「中村コーチは生粋の技術屋、職人タイプだが教えることも大好き。浜松開誠館高コーチ時代も高校生相手にとことん向き合い打撃を教えていた。同校監督は尊敬の念を抱いて多くを任せた。立浪監督とその様な関係構築は難しかったのかもしれません」(アマチュア球界に詳しいスポーツライター)

「2月のキャンプで石川昂弥を指導した中村コーチを立浪監督が怒鳴りつけた。首脳陣内ではしばらく指導しない方針だったようですが、信じられないほどの剣幕だった。自分のやり方を貫き、ある意味コーチを信用しないタイプだとわかった」(在京テレビ局スポーツ担当者)

 立浪監督は天才型であり打撃技術に人一倍の自信を持っている。現役引退後は解説者として勉強を重ねたが、指導者経験はほとんどないまま監督に就任。指導の部分での不安が指摘されていたが、中村コーチらを招聘して対処するはずだった。しかしコーチ陣には指導を任せられなかった部分もあるようだ。

「育成方針が定まっていないことの証明です。通常、新人入団時から数年先を見据えて指導、起用方法のプランを立てる。それができていないから監督とコーチでぶつかってしまう。根尾昂の投手転向問題も根本は同じ。選手側からすると振り回されて困惑しているはず」(在京球団編成担当)

 立浪監督、中村コーチは自身の技術に絶対的自信を持っている。自らの経験、体験を重視する監督とコーチがぶつかるのは必然。結果はある程度予測できたはずだが、そのようなコーチ人事を行ったフロントにも大きな問題があるだろう。

「根尾の投手転向などが最たる例。入団時に本人は野手一本と公言した。契約交渉時に約束(野手のみで起用する)などもあったはずです。選手獲得時から中長期も含めたチーム強化のビジョンが定まっていないのでしょう。このような状況が続くなら若手が覚醒するのは難しい」(在京球団編成担当)

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今後は内部での改革も必要か