友達のバイト先に用事があるときは、せっかくなら友人が働いているときに行きたい。そんなときは、ゼンリーを確認する。相手のシフトをわざわざ聞く必要がないため、気軽に立ち寄れて気楽だという。
若者たちが「気楽」と表現するこうしたつながり。だが、好きな相手が「何してるかな」と黒電話の前でたたずんだり、ポケベルで連絡し合えるだけで嬉しくてたまらなかった大人世代にしたら、ここまでつながってしまうことには、驚き以上に訝しむかもしれない。
「ずっとつながっているのは良くないよ」
とは、ゼンリーの仕組みを聞いた男性(52)の言葉。世の中には、知らないほうがいいことや、会えない時間が育むものがある、と主張する。昭和をたくましく生きた世代なら、そう考える人のほうが多いのではないか。
■「状況わかる」が効率的
だが、こうしたつながりは、時間の考え方が変わった、とも言える。
「インターネットには様々な情報があふれていますが、一方で自分の時間は限られている。好きなことに時間を費やすには、取捨選択が不可欠です」
そう説明するのは、アプリ分析会社「App Annie Japan」代表の上村洋範さんだ。相手の行動がわからずにやきもきするより、ある程度状況が掴めたほうが効率的。YouTubeやTikTokでショート動画が流行(はや)っているのも、タイムパフォーマンスを意識する心理があるという。
ゼンリーが生まれた背景も、ユーザーが時間を有効に使えるように、などの狙いがある。
ゼンリー社の広報担当者は、こう言う。
「スマホを使う時間を増やすのではなく、減らすことがゼンリーの目的です。自分の行動を自然に共有できるので、あえてSNSで発信する必要はありません。より多くの時間をリアルな世界での活動や友人との交流に使ってほしいと思っています」
(編集部・福井しほ)
※記事後編<<Z世代に広がる「察する」文化 SNS「共有」感覚に大人世代とギャップが生まれる理由>>に続く
※AERA 2022年6月27日号より抜粋