ヤクルトが強い。昨年にリーグ優勝、日本一と前年度の最下位から一気に駆け上がると、今年も首位を快走。交流戦では14勝4敗とパリーグの6球団に10カード勝ち越す「完全優勝」で圧倒的な力を示した。
春先は主力に故障者が相次ぎ、決して盤石ではなかった。正捕手の中村悠平が下半身の張りで開幕に間に合わず、1軍に復帰したのは5月3日だった。エースとして期待された3年目右腕・奥川恭伸も今季初登板となった3月29日の巨人戦(神宮)で4回を終えて緊急降板。上半身のコンディション不良で戦線離脱し、今季の登板はこの1試合のみだ。
開幕から打撃絶好調だったサンタナも下半身のコンディションで4月7日に登録抹消。左半月板のクリーニング手術を受け、復帰のメドは立っていない。主将の山田哲人も交流戦で打率.153、5本塁打、7打点と本来の状態に程遠かった。想定外の誤算が次々起こったが、それでも勝ち続けるのは、高津臣吾監督の手腕によるところが大きい。
ヤクルトを長年取材してきたスポーツ紙記者は、こう分析する。
「高津監督は選手のコンディションを重視して絶対に無理をさせない。ミスをしても結果論で責めないから、選手たちは伸び伸びとプレーしている。緻密な野球は現役時代に指導を受けた野村克也監督の影響を大きく受けていますが、それだけではない。米国、台湾、韓国、日本国内の独立リーグと様々な環境でプレーしてきたので選手の気持ちに寄り添える。起用法も役割分担がきっちりしているので、選手は準備しやすい。特に強力な救援陣は高津監督でなければ再建できなかったと思います。大らかで気さくに見えますが、凄く負けず嫌い。育てながら勝つことに長けた監督ですね」