松原:自前で人材を育てようという気概が感じられない。維新は確かに大阪の財政を改革したのかもしれないけれど、大阪府はコロナ禍で、人口あたりでは全国で最も多い死者を出した。背景には、保健所を統廃合したことなどの影響が指摘されている。それが問われないというのもどうなのか。

──ところで、参院選が終わると、国政選挙のない「黄金の3年間」が訪れると言われています。国政は、どんな方向に向かっていくのでしょうか。

松原:選挙までによほどの大きなスキャンダルがなければ、自民党が勝つでしょう。その後、何を大きな課題として出していくのか。新しい資本主義か、改憲か。3年間もつだけの大きな課題を出さないと、皆ついてこない。

■「黄金の3年間」何に取り組むか

御厨:黄金の3年間を浪費するか、うまくいくか。私は浪費する気がしていますけれどね。

松原:岸田首相は、本当は切れる人なのだ、という潜在的なイメージはまだ残している気がします。今度の選挙にどういう形で勝つかも重要で、大勝した場合、「新しい資本主義」なのかはわかりませんが、富裕層への税制改革をやらざるを得ないのではないか。民間企業が配当に回す割合が増えていたら、賃金が下がるのは当たり前です。ところがよくわからないのは、ここにきてまた資産所得倍増計画を出して、富裕層のリクエストに応えるようなことを言っている。

御厨:財政のことを考えたら、富裕層に切り込まないと駄目でしょうね。痛みを伴う改革になりますが、それを誰がやるのか、ということになってくる。やっぱり、外交案件が先に来るのではないか。憲法改正の議論も、それに絡んでくるかもしれない。

松原:ロシアのウクライナ侵攻に伴う混乱は、あと3年間は続くでしょう。その間、中国が台湾を攻める動きを見せるかもしれない。そのとき、岸田政権がどのように対応していくのか。沖縄も、台湾有事に備えてどういう配備をするかという話になってきた。台湾で何か起きたら、沖縄は第一線になります。普天間基地をめぐる米軍との関係も、自衛隊の配備のことも、仮に戦火が起きたときに日本がどう対応するのか、想像しながらやっていくしかない。

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