6月15日、通常国会が閉会した。政府が提出した61本の法案は26年ぶりに100%の成立率となるなど「無風」状態。闊達な議論が消えた国権の最高機関は、どこに向かうのか。御厨貴・東大名誉教授と松原隆一郎・放送大学教授が振り返る。
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松原:岸田文雄首相はうまく日本維新の会などを使いながら、野党を分割するように持っていっている。その結果、野党が野党にかみつくという、今までありえなかった状況が生まれています。憲法審査会をめぐっても、しゃべればしゃべるほど、野党は分裂していく。ロシアによるウクライナ侵攻があって、戦後80年近く左翼が持っていた「世界は善意でできている」「話せばわかる」という理想主義が壊れてしまった。連合だって、どこにつくのかわかりません。
御厨:自民党は何もしていないけど、野党は分裂して傷つけ合って。「野党ボロボロ国会」と言ってもいい。国民民主党の玉木雄一郎代表は「政策実現のリアル」を追求するという。どうせ政権が取れないなら与党にすり寄ったほうが、何かやったときにメディアにとりあげられて、自分たちを大きく見せられるじゃないか、ということでしょう。
松原:実際、国民民主党はメンバーの多くが立憲民主党に吸収されて埋没していくと思われたのに、今国会では一定の注目を集めた。効果が出てしまったわけですね。参院選での選挙協力などをめぐって維新の会とケンカをしても、それもまた大きく報じられる。
御厨:あれだけメディアに出たら立憲民主党より目立ちますし、PR効果があったのは確かです。玉木氏は妖怪のようですね。元大蔵官僚で緻密な面もあるはずの人物が国会対策であれだけメチャクチャやるのは、参院選に勝つためのかく乱戦術でしょう。しかし、かつての新自由クラブのように、結局は自民党に入党して終わり、ということにもなりかねない。そのギリギリのところをやっている。
■野党かき回した維新の人材不足
松原:維新の会もそうですが、公明党が自民党と組んだ20年間を見て、自分たちもああなりたい、と思ってしまったのでは。
御厨:旧民主党も一度は政権を取ったんですけどね。しかし、敗れた後も何をためらったのか、その総括をきちんとしなかった。結局、挫折から立ち直れず、ついには野党ですらなくなってしまった。立憲民主党も、一向に存在感がなかった。