『イスタンブールで青に溺れる 発達障害者の世界周航記』(1870円(税込み)/文藝春秋) 「自閉スペクトラム症があると、青にこだわる人が多い」──40歳で自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症を診断された筆者が世界46カ国を旅した回想録的紀行。「コミュ障たちの邂逅(プラハ)」「色彩ゆたかな巨大ソフトクリーム(モスクワ)」などユーモラスかつ豊かな描写力で「当事者の見る世界」を体験させてくれる(photo/写真映像部・加藤夏子)

 想像力がジャンプすることも特性のひとつ。その感覚が作中に登場する多彩な文学やアニメ作品からの引用で体験できる。ローマでいきなり「機動戦士ガンダム」の名ゼリフが登場したり、ニューヨークで海鮮料理を食べながら『ワーニャ伯父さん』を思い出したり。子ども時代から、そんな自分が謎だったという。

「一点集中型というか、ぶっちゃけていうと『天才かバカか』の両極端。中学の通知表には1から5まで全部そろっていました。なぜ自分はこんなにできて、かつできないのか?と」

 大学に就職後にうつ病を発症。初めて診断を受け、多くのことが腑(ふ)に落ちた。以後、「当事者研究」として経験を発表しながら、発達障害の自助グループ運営にも関わる。

「自分を理解し、自分を好きになれると、世界は生きやすくなる。読んで『自分のことのようでびっくりした』という定型発達者の方もいました。発達障害があると、こんなにおもしろい世界が開けるかもしれない。そう知らせることで社会の目が変わってくれたらいいなとも思います」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2022年6月27日号

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