
想像力がジャンプすることも特性のひとつ。その感覚が作中に登場する多彩な文学やアニメ作品からの引用で体験できる。ローマでいきなり「機動戦士ガンダム」の名ゼリフが登場したり、ニューヨークで海鮮料理を食べながら『ワーニャ伯父さん』を思い出したり。子ども時代から、そんな自分が謎だったという。
「一点集中型というか、ぶっちゃけていうと『天才かバカか』の両極端。中学の通知表には1から5まで全部そろっていました。なぜ自分はこんなにできて、かつできないのか?と」
大学に就職後にうつ病を発症。初めて診断を受け、多くのことが腑(ふ)に落ちた。以後、「当事者研究」として経験を発表しながら、発達障害の自助グループ運営にも関わる。
「自分を理解し、自分を好きになれると、世界は生きやすくなる。読んで『自分のことのようでびっくりした』という定型発達者の方もいました。発達障害があると、こんなにおもしろい世界が開けるかもしれない。そう知らせることで社会の目が変わってくれたらいいなとも思います」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2022年6月27日号