日本の競馬と海外の競馬には様々なルールの差異があるが、そのひとつが馬体重の発表。日本では当たり前のように前走比でマイナス4キロやプラス8キロなどとレース前に発表され、重要な予想のファクターとして活用されているが、アメリカやイギリス、アイルランド、フランスなど欧米主要国では馬体重の発表は行われていない。アジア・オセアニアでも香港は発表があるが、オーストラリアではやはり馬体重の発表はない。
ということで、今回は巨体で話題になった馬について取り上げるが、結果的に日本で走った馬(海外馬を含む)に絞られることになった。しかもそのほとんどがパワーを要する短距離かダートで活躍した馬だ。これは人間の場合でも100メートルなどを専門とする短距離走者が筋肉ムキムキなのに対して、マラソンランナーは極限まで身体を絞っていることからも想像しやすいだろう。
さて、馬体重の話をするならばやはり最初に取り上げるべきはあの横綱にちなんで名づけられたヒシアケボノだろう。まさに名は体を表す。人気競馬ゲーム「ウマ娘」にも登場しているが、「サイズ指定おかしくない?」とツッコミたくなるほど他のキャラより大きなサイズで実装されている。
1994年のデビュー戦でのヒシアケボノの馬体重は552キロ。結果は4着で、自分より120キロ近く軽い428キロのコクトジュリアンに敗れた。当時は一般的に馬体重が重い馬は休み明けが苦手とされ、レースに使われるごとに調子を上げていったが、ヒシアケボノも4歳(旧馬齢表記)の5月に叩き4戦目で初勝利を挙げると、そこから4連勝。その年の瀬には年間(実質7カ月!)12戦目でG1スプリンターズステークスを制した。この時の馬体重560キロが、今でもJRAのG1勝利時の最高馬体重記録として残っている(地方交流重賞のJpn1を含めると、2016年の東京大賞典をアポロケンタッキーが565キロで勝利)。
ヒシアケボノに次ぐJRA2位の記録を持つのは、香港の歴史的名馬サイレントウィットネスだ。2000年代に香港競馬界を席巻した名スプリンターで、デビュー戦からの17連勝は今なお香港最長記録。マイル戦に挑戦したことで連勝が止まり、2005年6月の安田記念でも3着に敗れたが、その年の10月に再来日したスプリンターズステークスでは558キロの巨体を揺らしてデュランダルらに快勝し、名誉挽回した。