フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌五輪を連覇した羽生結弦が7月19日、東京都内で記者会見を開き、競技から退き、プロに転向する意向を表明した。羽生は記者一人ひとりと向き合いながら、丁寧に質問に答えた。
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「みなさんの応援の力で、羽生結弦としてフィギュアスケートをまっとうできるのが本当に幸せです。まだまだ未熟な自分ですけれど、プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意しました」
会見場に現れた羽生結弦はそう口を開いた。プロ転向後については、「自分のなかで考えていることはある」としながらも明言は避けた。
「競技者として他のスケーターと比べ続けられることはなくなりました。ただ、これからの自分のことを認めつつ、自分の弱さと、過去の自分とも戦い続けながら滑っていきたいと思います。そして、4回転半ジャンプにもよりいっそう取り組んで、みなさんの前で成功させることを考えながら、これからも続けたいです」
「しがない自分なので、言葉遣いが悪かったり、噛んだりしても許してください」とはにかみながらも、飛び出す言葉の一つひとつが力強かった。
その人柄が垣間見えたのは、会見が半分ほど過ぎた頃。会場の左右に置かれたマイクから、質問する記者に向き合って答える羽生に対して、司会者が、
「(前方にいるカメラマンが撮りやすいように)お答えするときは正面を向いていただけると……」
とお願いするシーンも。質問する記者一人ひとりに向き合おうとする姿が印象的だった。
66分の「決意表明」のなかでは、感謝の言葉もあふれた。会場に集まった報道陣への感謝から始まり、学生時代の恩師、フィギュアスケートの先生、そしてファンに対して、何度も「ありがとうございます」と繰り返した。
競技からは退くが、リンクには立ち続ける。会見の最後、ファンへの言葉を聞かれて、こう締めくくった。
「ありがとうございました、じゃなくて、ありがとうございます」
(編集部・福井しほ)
※AERAオンライン限定記事