写真家・葛谷舞子さんの作品展「life~笑顔のカケラ~」が9月17日から東京・富士フォトギャラリー銀座で開催される。障害児とその親たち計29組の親子ポートレートという異色の作品を発表した葛谷さんに、その思いを聞いた。
* * *
■障害のある子は心のよりどころ
横浜市の日吉駅に近い住宅地にある写真スタジオ「Photostudio-Home」。障害児やその親たちに恩を返していきたい――そんな思いから葛谷さんがこのスタジオを建てたのは8年前。今では、多くの障害のある子とその親が、親子写真を撮りにこのスタジオを訪れる。
葛谷さんが障害児を撮り始めたのは大学3年のとき。
「出生前診断が波紋を呼ぶ」。そんな見出しの新聞記事が目にとまった。
出生前診断というのは胎児のDNAを調べる検査で、ダウン症のほか、脳や心臓の異常などがわかる。
「胎児がダウン症とわかると9割の人が中絶する、と書かれていて、すごく衝撃を受けた」
そう言うと、葛谷さんは保育園に通っていたときの思い出を話し始めた。
「私は早生まれで、成長がすごく遅かったんです。言葉もぜんぜん出てこないし、動きも鈍い。同じ学年の子といっしょに遊べなかった。そのときにそばにいてくれたのが、ダウンちゃんとか、自閉症の子だった。私にとって、障害のある子というのは心のよりどころで、大切な存在だったんです」
しかし、ふつうの人は障害児が普段どんな暮らしをしているか、知らない。だから、出産や育児が怖いのではないか。障害児の生活を撮影し、その写真を多くの人に見てもらうことで、生まれてくる命がもっと増えるのではないか。
そう思った葛谷さんは「中野区の療育センターにお願いした。そうしたら、ダウンちゃんのご家族を紹介してくれたんです」。
■この子たちに恩返しをしたい
それが関根家だった。当時、小学1年生だった真衣ちゃんは「ほんと、かわいくて」。
お互いを「ちっちゃいマイマイ」「おっきいマイマイ」と呼び合うような仲になるころには、関根家で寝泊まりするようになった。