亀井由美子、康生(右、14歳、未熟児網膜症)
<br />【夢】シンガー・ソングライター(康生)
<br />【障害がわかったときの気持ち】不安な気持ちでいっぱいでした。どうか、視力が残りますようにと願い、いろいろな治療や手術を行いましたが、現状は光覚を残すのが精いっぱいでした。初めは悲しみに打ちひしがれましたが「親として、できることは何か?」と思い悩みました。これからの医学の進歩に望みをかけています
<br />【いまの気持ち】夢に向かって頑張ってほしい
<br />(撮影:葛谷舞子)
亀井由美子、康生(右、14歳、未熟児網膜症)
【夢】シンガー・ソングライター(康生)
【障害がわかったときの気持ち】不安な気持ちでいっぱいでした。どうか、視力が残りますようにと願い、いろいろな治療や手術を行いましたが、現状は光覚を残すのが精いっぱいでした。初めは悲しみに打ちひしがれましたが「親として、できることは何か?」と思い悩みました。これからの医学の進歩に望みをかけています
【いまの気持ち】夢に向かって頑張ってほしい
(撮影:葛谷舞子)

 最重度の知的障害なので、笑うといってもほんの少し口角が上がるくらい。

「でも、彼女のなかでは笑って、カメラをちゃんと見てくれた。帰るときに『ありがとね』って言ったら、自らタッチしてくれた。心が通じ合う瞬間みたいな、楽しい思い出。苦労と楽しさは表裏一体。写真だけじゃなくて、ここでの体験を思い出として、持って帰ってほしいです」

 そんな気持ちで葛谷さんが障害児だけでなく、親といっしょに撮影する「親子フォト」のプロジェクトを始めたのは4年前。

「障害児の親で、いますごくポジティブに生きている人が、産んだときは、『これで人生終わった』って、泣き続けた話を聞いたんです。そのとき、子どもの障害を受け入れて、親子で幸せに笑っているということは、すごく大切だなって、思った。それが親子フォトを撮り始めたきっかけです」

 写真展会場には親子フォト、29組の作品が展示され、キャプションには「夢」「障害がわかったときの気持ち」「いまの気持ち」が書かれている。

「ほんとうは言いたくない、隠しておきたいことなのかもしれないのに、きちんと書いてくださった。前向きに取り組んでくれた」

小田育子、泰誠(左、5歳、全盲・知的障害)
<br />【夢】家族で音楽セッション。たいちゃんが、音楽が好きなので、好きなことを見つけてほしい
<br />【障害がわかったときの気持ち】妊娠9カ月のときに胎児異常が見つかりました。それまで順調だと思っていた妊婦生活が一気に地獄化したのをはっきりと覚えています。産まれてきても生きていけるかわからないと言われたなかでの出産。生まれてからもたび重なる大きな手術。これ以上、手の施しようがないので、「看取り」も考えてほしいと言われたときの気持ち。治療や入退院ばかりの生活が続いていたので「たいちゃんは産まれてきて本当に幸せだったのか」と、3歳ごろまで、自分のなかで葛藤していました。見た目による偏見に嫌な思いは数えきれないほどしていますが、それでもあのとき「看取り」という選択をせずに精いっぱい生き抜いてくれた、たいちゃんに感謝の気持ちでいっぱいです。そんなたいちゃんが「パパとママとお兄ちんのところに来てよかった」と思える笑いの絶えない家庭でありたいです
<br />【いまの気持ち】毎日すてきな笑顔を届けてくれてありがとう。たいちゃんのペースでできることを増やして、楽しいことをたくさん見つけていこうね!!
<br />(撮影:葛谷舞子)
小田育子、泰誠(左、5歳、全盲・知的障害)
【夢】家族で音楽セッション。たいちゃんが、音楽が好きなので、好きなことを見つけてほしい
【障害がわかったときの気持ち】妊娠9カ月のときに胎児異常が見つかりました。それまで順調だと思っていた妊婦生活が一気に地獄化したのをはっきりと覚えています。産まれてきても生きていけるかわからないと言われたなかでの出産。生まれてからもたび重なる大きな手術。これ以上、手の施しようがないので、「看取り」も考えてほしいと言われたときの気持ち。治療や入退院ばかりの生活が続いていたので「たいちゃんは産まれてきて本当に幸せだったのか」と、3歳ごろまで、自分のなかで葛藤していました。見た目による偏見に嫌な思いは数えきれないほどしていますが、それでもあのとき「看取り」という選択をせずに精いっぱい生き抜いてくれた、たいちゃんに感謝の気持ちでいっぱいです。そんなたいちゃんが「パパとママとお兄ちんのところに来てよかった」と思える笑いの絶えない家庭でありたいです
【いまの気持ち】毎日すてきな笑顔を届けてくれてありがとう。たいちゃんのペースでできることを増やして、楽しいことをたくさん見つけていこうね!!
(撮影:葛谷舞子)

■何日もへこんだ苦い思い出も

 実は筆者の息子は、生まれてきたときにいくつもの障害があった。いまも小児難病の専門病院に通っていることもあり、障害児と接する機会は多い。初対面で障害児のすてきな笑顔を撮るのはなかなか難しく、葛谷さんの作品を見ると、(よくこれだけの笑顔が撮れたなあ)と思う。

「自閉症の子を撮るときはずっと飛び跳ねていたりするので、その子がどういう瞬間に落ち着くのか、ちょっとしたところに気づくことが大切ですね。例えば、壁に向かって跳ねている子を親が撮れる位置に連れてきても、またすーっと戻っちゃう。そのとき、その子はお母さんにハグしてもらいたいのかなと思ったんです。それで、『抱きしめてあげてください』と言って、お母さんが、ぎゅーってしたら、落ち着いて、写真が撮れた」

 しかし、苦い思い出や葛藤もある。

「七五三で、知的障害と発達障害のお子さんだったんですが、着物を着る、という時点から嫌がっていた。脱ぎたいって、泣いているんですけれど、親が『もういいです』と言うまで私たちは諦めることはできない。一応撮れたんですけれど、その子は楽しくなかった。誰一人としてよかったな、と思えるような撮影ではなかった。そういうときは、ずーっと何日もへこみます」

 親の願いをかなえてあげることも大切だけど、子どもの気持ちも大切にしてあげたい。

「自分も親なので、親の気持ちもすごくわかる。どんな状況であっても、納得できる写真を持って帰ってほしいです。いい思い出も」

アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】葛谷舞子写真展「life~笑顔のカケラ~」
富士フォトギャラリー銀座 9月17日~9月23日

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