園遊会に出席した眞子さま(左端、14年4月) (c)朝日新聞社
園遊会に出席した眞子さま(左端、14年4月) (c)朝日新聞社

 だから眞子さまは、「愛」にかけた。とは言わない。愛のありようは人それぞれで、その人にしかわからない。そう美智子さまが教えてくれるからだ。

 眞子さまの婚約内定記者会見の翌10月、美智子さまは83歳のお誕生日を迎えた。その日に公表された美智子さまの文書は、6月に「特例法」で決まった陛下の退位を念頭に置いたものだった。国内外の出来事への思い、陛下と出かけた国内外への旅についてなどがたっぷりと書かれていた。

 宮内記者会が「この1年を振り返って感じられたこと」を尋ねてのもので、出来事の具体例の一つとして「眞子さまの婚約内定」もあげられていた。が、それへの言及はあっさりしたものだった。

「身内では9月に、初孫としてその成長を大切に見守ってきた秋篠宮家の長女眞子と小室圭さんとの婚約が内定し、その発表後程なく、妹の佳子が留学先のリーズ大学に発っていきました」

 身内の話は長々しないというたしなみもあるだろう。が、それだけではないことがはっきりしたのは、皮肉にも「小室さん報道」が盛んになってからだった。

 2人の結婚が延期されて以来、小室さん親子については悪(あ)しざまな報道が日常になっていった。「美智子さまが小室さんについてこう評している」といった報道も目につくようになり、宮内庁は18年5月、「眞子内親王殿下に関する最近の週刊誌報道について」という文書をホームページで公表した。そこにはこうあった。

「(結婚延期に際し)両陛下が第一に考えられたことは、これは眞子さまの内心に触れる事柄であり、何人といえども、恐らくはご両親殿下でさえ眞子さまのお考えを待つ以外おありでないということでした」

 これで美智子さまのお誕生日の文書がわかった気がした。幸せとは、それぞれが決めていくもの。だから家族といえども、他人ができるのは、静かに祝うことだけ。そういう思いだったのだ、と。

「初の民間出身皇太子妃」として家庭を築き、陛下の公務を支えてきた。「愛」と「仕事」、両方に努力した人生の大先輩だからこその境地ではないか。そう拝察している。

 眞子さまは年内に、ニューヨークに行くと報道されている。そこでの人生がどうなるか、それは眞子さまが決めること。美智子さまはこれからも大切な初孫の眞子さまを、静かに見守ることだろう。(コラムニスト・矢部万紀子

週刊朝日  2021年9月17日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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