皇居・紅葉山御養蚕所で蚕に桑の葉を与える美智子さま(2017年5月、宮内庁提供) (c)朝日新聞社
皇居・紅葉山御養蚕所で蚕に桑の葉を与える美智子さま(2017年5月、宮内庁提供) (c)朝日新聞社

 昨年11月には「お気持ち」を文書で公表、「結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択です」と訴えた。「愛」を表明してはばからない強さ。それが眞子さまを支えてきた。

 だが、私はもう一つ、眞子さまを支えた強い思いがあると感じていた。それは「何としても、ここではない場所に行きたい」という思い。若者なら誰でも持つものともいえるが、切実さがあった。つまりそれは「皇室を出て、自由になりたい」。そういう気持ちだと思う。

 報道によれば眞子さまは、天皇、皇后に別れを告げる「朝見の儀」もしないという。祖父母のいる温かな場所だった皇居から、挨拶(あいさつ)なしで出ていく。それほどの決意について考える時、頭に浮かぶのが「幸福とはどう決まるのか」という命題だ。非常に大雑把に答えるなら、社会的充足と個人的充足、両方あっての幸福ではないだろうか。つまりは、「仕事」と「愛」。

 眞子さまには「愛」がある。だが、「仕事」はどうだろう。日本工芸会総裁、日本テニス協会名誉総裁という役職に加え、東京大学総合研究博物館特任研究員という職もあることは承知している。が、どうしても「女性皇族」という存在の曖昧(あいまい)さを思ってしまう。

 皇室典範12条には、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」とある。女性皇族についての決まりはそれだけ。つまり、結婚したら出ていくことだけが定められた存在なのだ。

 そして女性皇族は、成人すると「公務」をするのが慣例だ。眞子さまも国内外で熱心に働いた。が、それは眞子さまの心をどれだけ充足させただろうか。

 長く働いてきた女性として、仕事の喜びは責任とセットだと思っている。だが「職場」としての皇室は、「寿退職」が決まりだ。幼い日、美智子さまから「たいそうはたらき者だと思いました」とほめられた眞子さまが、そういう職場で幸せを感じたとはどうにも思えない。

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