帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「放っておく」。

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【無一物】ポイント

(1)昔、「ほっとけのおびっちゃん」だと言われていた

(2)『放っておく力』を読んで共感するところがあった

(3)日銭を稼ぎ、その金で晩酌を楽しむ、それだけで十分

 もう四十数年前になりますが、都立駒込病院で外科医をしていた頃、私は看護師さんに「ほとけのおびっちゃん」と呼ばれていました。緊張感がみなぎる医療の現場では、医師がつい怒ってしまうこともあるのですが、私にはそういうことがないというのです。まあ、割に冷静なタイプだったのかもしれません。でも、そのうち帯津先生は「ほとけ」ではなく「ほっとけのおびっちゃん」だと言われるようになりました。実は仏ほど悟っていないのが、ばれてしまったのです(笑)。

 確かに私は、大抵のことは放っておいていいのではないかと思っています。そんなことを原稿に書いたりしていたら、それを読んだ友人が本を届けてくれました。タイトルは『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』(知的生きかた文庫)です。曹洞宗の住職でもある枡野俊明さんの著書で、帯に「15万部突破」とあります。私の本はそんなに売れたことがないので感心しますね。99項目にわたって、「放っておく」方法が書かれているのですが、私の「ほっとけ」と共通するものもいくつかありました。

 枡野さんは「人間関係はもっとドライでいい。むやみに『関わらない』」と書いているのですが、確かにそうですね。そのために必要なのが「『一人の時間』を豊かに過ごす」ことだといいます。つまり「一人の時間」を持てる人は、むやみに「関わり」を求めないということなのです。私にとっては、朝3時半に起床して、4時半までが、その豊かな時間です。

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