
松本 あるデイサービスでのことをよく覚えています。20代の若いスタッフさんが4人、利用者さんは10人ぐらいのところ。親と子どもみたいにしゃべっていて、めっちゃいい空気のところやなと思っていました。そこで小さなレクが始まったんです。
西川 節分の日やったね。
松本 人気アニメ「進撃の巨人」の音楽が流れて、スタッフさんが巨人の格好で「最近こういうのがはやってるんですよ」と説明しながら部屋を歩き回るんですよ。利用者さんが豆を投げるんですが、うまく投げられない人もいる。そこでスタッフさんがラジコンに巨人のぬいぐるみを載せて、利用者さんのところまで動かすんですよ。それに新聞紙を丸めたやつを投げつけるんですけど、ラジコンは逃げて、「残念ですね、またチャンスは来ますよ!」とスタッフさん(笑)。昔ながらの節分じゃないとだめなのかなと思っていたけれど、スタッフさんも利用者さんもみんな楽しそうにしていてすごいなと思いましたね。
■介護レクと漫才 どこが似てる?
松本 お客さんの反応を肌で感じ取る力は、漫才で身についていました。でも試行錯誤はありましたね。普通の舞台と違って、施設にいらっしゃる人は、自分らより目上の大先輩。その人の前にいきなり出てきて「さあ右手上げてくださいね」「じゃんけんしましょうね」とかいっても、誰がそれに従ってくれんねんと。
西川 そうだね。
松本 何かを話そうとすると、こっちが先生になってしまう。だから逆に、僕たちが生徒の立場になって、相手にしゃべってもらったら、心を開いてくれるんじゃないかと思ったんです。
西川 「いままでで一番楽しかった思い出は?」とか聞いて、それがどんなに小さいことでも僕らが話を広げます。たとえばあるお金持ちのおばあちゃんが、世界中を旅行したとめっちゃ自慢していたんですね。