■お年玉も親に渡してしまう

「中学校の修学旅行へ行ったとき、帰ってきた翔平は家族にお土産を買ってきてくれたんですが、そのお土産代以外は使わずに、残ったお金を私たち親に返してきたんです。普通ならお小遣いとして渡したお金を使い切るとか、その後のお小遣いとして自分で持っておくものだと思うんですが、返金してきたときは、ちょっと驚きましたね。翔平は無駄なことには『お金をかけなくてもいい』と思うところがあるみたいで。

 お年玉も、そのときに使う予定がなければ『持っていて』と私たちに渡していました。結局そのお金で買うのは野球用品。野球以外には興味がないというのはあったんでしょうけど、翔平にはそういうところがあるんです。

 服装にしてもそうでしたね。野球を始めてから土日は野球ですし、私服を着る機会がほとんどなかったですから興味が湧かないのはわかるんですが、それにしても服装に関しては……。高校に入ってからも変わりませんでしたね。お正月休みに実家に帰ってきたときは、『洋服がないね』って、家にあるものから何となく自分が着られそうなものを見つけたり。あるときなんかは、友達と出掛けることになって着るものがないとなり、お兄ちゃんのジーパンと私のポロシャツを手にして『これでいい』と言って出掛けたこともありました」

佐々木 亨/スポーツライター
1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

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