米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手(GettyImages)
米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手(GettyImages)
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 米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手は、アスリートとしての能力だけでなく人柄でもファンを魅了している。その人となりはどのようにして育まれたのか。スポーツライターの佐々木亨さんが大谷の両親に聞いた――。

※本稿は、佐々木亨『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)の一部を再編集したものです。

■二歳違いの姉とよくケンカをした

 いかにして大谷翔平の人間力は生まれ育まれてきたのか。

 彼の少年時代を両親の証言でつないでいくと、その真相に少しずつ近づいていく。

 父には、末っ子を「叱った」記憶がほとんどない。どの家庭にもあるように、年齢の近い幼い兄弟というものは、些細なことでよく喧嘩になるものだ。先に手を出した、出していない。お気に入りのものを壊された、壊していない。子供の感覚や視点からすれば、それらも十分にケンカになり得る大ごとなのだろうが、そんな他愛もない、いわゆる兄弟ゲンカは大谷家の場合は「姉弟ゲンカ」だ。二歳違いの姉と翔平は、幼い頃はよくケンカをしたのだと父の徹さんは言う。

「歳が近かったこともあって、二人はしょっちゅうケンカをしていましたよ。親からすれば、本当に他愛もないものです。そんなケンカで、どっちもダメじゃないかと二人を怒ったことはありましたけど、それぐらいですね。翔平が何か悪いことをして怒ったことはないですね」

 両親の記憶によれば「幼稚園か小学校に上がったばかりの頃」に、当時流行したハリーポッターのグッズをめぐって、末っ子は珍しく泣きわめいたことがあった。今でも大谷家に残る映画のキャラクターが表紙に描かれた分厚いノートを見ながら、母はこう語る。

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父が唯一、大谷を本気の声で叱ったとき