そして、今回の騒動についてにも触れている7月31日のSNSの書き込みは以下の内容だった。
<オリンピックはアスリートにとって、最も重要な大会の一つです。私は200メートルのためにトレーニングしてきました。それなのに、なぜか私はリレーのメンバーに入っていました。なぜコーチは私がリレーを走る準備、気持ちがあるのか確認しなかったのでしょうか?それを聞いても無視されました>
そして、羽田空港に連れていかれる直前に投稿したとみられる動画ではこう語っていた。
<IOC(国際オリンピック委員会)に助けてほしい。圧力をかけられて、強制的に帰国させられようとしている>
加藤勝信官房長官も2日、会見でこの問題に触れた。
「ツィマノウスカヤ選手は安全な場所にいる。関係機関と連携して日本政府として適切に対応したい」
現在、ツィマノウスカヤ選手はポーランドに亡命を申請したと報じられている。強制帰国を命じられたツィマノウスカヤ選手はなぜ、亡命の意思を示したのか。
ベラルーシのトップは強権的な「独裁者」と言われるルカシェンコ大統領だ。昨年8月に大統領選挙では勝利したが、大規模な反政府デモが起こった。選挙が公正に行われていたのかと、今も疑問視する声が上がっている。
「ルカシェンコ大統領は東京五輪でベラルーシの選手が多くのメダルを獲得するよう厳命していた。メダルラッシュを政権浮揚の起爆剤にしたいと画策していました。しかし、現在までベラルーシのメダル獲得数は金と銅が1個ずつと振るいません。そんなところへツィマノウスカヤ選手がコーチの不手際を暴露し、全世界に広がってしまった。平和な日本から見れば、強制帰国を命じられ、亡命とは飛躍していると思うかもしれません。しかし、ルカシェンコ大統領は選挙結果まで自分が有利なように動かしかねない独裁者。トラブルになり、追い込まれたツィマノウスカヤ選手は帰国すれば、独裁政権によってどんなひどい目にあうか、と命の危険を感じ、亡命を訴えた。それが身を守る唯一の方法だったのかもしれない」(外務省関係者)
SNSにはツィマノウスカヤ選手の素晴らし笑顔の写真が数多く、投稿されている。彼女の輝くばかりの姿をまたフィールドで見れる日が来ることを願うばかりだ。
(AERAdot.編集部)